AmazonドイツのEC市場調査とドイツ展開・販売方法を解説!

ECモール
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この記事では、Amazonを活用したドイツ向けの物販の手順を紹介します。これからドイツへ向けた事業展開や販路の拡大をしたいとお考えの方は参考にしてください。

ドイツへのAmazonを活用したEC展開の有望性

ドイツのEC市場規模

まず、ドイツEC市場規模を見てみましょう。
ドイツのEC市場規模は、Statistaの最新データによると、ドイツにおける2020年のEC市場規模は876億ドルで、前年比16.1%増と成長傾向にあります。
ネットインフラも整っており、国民のインターネット普及率も93%以上(2022年)と、EC大国としての土台は十分整っています。しかしその一方で、EC化率は10%程度とそれほど高いわけではありません。
この要因は、根強い現金主義の文化を背景としたキャッシュレス比率の低さと、合理主義的で保守的な消費活動といった、ドイツ人消費者の特性が要因と考えられます。

EC市場規模(2022) EC化率(2022)
ドイツ 約14兆円 9.7%
日本 約14兆円 9.13%

2022年の時点で、ドイツのEC市場の規模は1,017億ユーロ(約14兆円※)に達しました。ドイツもまた、新型コロナウイルスの影響によりEC利用が促進され、国際的に見るとシェアは小さいものの、ドイツのEC市場は年々拡大傾向にあります。

※1ユーロ=138.09円(2022年平均レート)

参考:消費者の特性から見る!ドイツのEC市場の現状と課題
参考:【2022最新】EC市場を徹底解説!日本・世界の市場規模や成長率をランキング化

Amazonのドイツでの市場規模

EC市場の調査会社ecommerceDBによると、2023年8月時点ではドイツの EC の売上高は 2023年終で1,079億 7,980万ドルの規模となり、世界5位に躍進するだろうと予測されています。
ドイツ国内のECサイト別売り上げを比較すると、Amazonの売り上げは2位OTTO.DEの5,124百万ユーロの約3倍、15,681百万ユーロです。AmazonがドイツのECサイトで圧倒的な強さを見せていることは一目瞭然です。

表:ドイツのECサイト売り上げランキング(2021年)
(単位:100万ユーロ)

ウェブサイト名 金額 取扱品目
1 amazon.de 15,681 総合
2 otto.de 5,124 総合
3 mediamarkt.de 2,544 家電・IT・メディア
4 zalando.de 2,515 ファッション
5 ikea.com 1,747 家具
6 saturn.de 1,340 家電・IT・メディア
7 apple.de 1,190 IT製品
8 lidl.de 1,022 総合(スーパーマーケット)
9 hm.com 900 ファッション
10 docmorris.de 783 医薬品、美容用品

出所:小売業研究所(EHI Retail Institute)
参考:欧州の EC 市場に関する調査 (各国編)

日本製品のドイツでの評価

株式会社電通の調査によると、日本製品は、ドイツで「高性能」(27.4%)、「上質である」(22.9%)、「信頼できる」(20.8%)、「実用的」(17.1%)と言ったイメージを持たれています。

西洋文化圏では、大衆車やテレビに加えて様々な日本製品の選択肢の中から「この中にない」という選択肢が上位に上がっていることから興味関心を持っていないことと同義と言えます。 特にドイツにおいて、日本製品に対する購買意欲の低さは、欧米全体でも低いと言えます。これはインバウンド関連でも見受けられ、欧米諸国を対象とする誘致促進や販売拡大によって事業を成功に導くためには、独創的な工夫が必要です。
表:世界の日本製品の購入意向 TOP5
(n=300)

ドイツ
1 この中にない
2 テレビ
3 大衆車
4 スマホ
5 ノートパソコン

日本製品に対する購入意欲が低いと言われる中でも、日本で作られたデザインは欧州で根強い人気を誇っています。2019年3月に開催された雑貨や贈答品の展示会「京都インターナショナルギフトショー」では、日欧の食文化の違いをもとに、箸文化の日本と、料理によってナイフ、フォーク、スプーンを使い分ける欧州の文化をフュージョンにした革新的なアイデアが注目されました。

参加者で近代的な個人商店が集まるベルリン・ミッテ地区でキッチン商品を扱う小売店の担当者は、木材の箸とスプーンのセットに対して「伝統的な技術で作られる近代的な商品は外国人にとって魅力的だ。モダンでありながらも日本らしさが分かる商品は素晴らしいと思う」というコメントがありました。

参考:外国人が読み解くジャパンブランドの魅力と課題~「日本製品」編 | ウェブ電通報
参考:日本の伝統とモダンの融合が欧州で高評価(ドイツ) | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

Amazonを活用したドイツでのEC展開のステップ

つづいて、Amazonを活用したドイツでのEC展開のステップについて説明します。
大きく5ステップに分かれます。

1.ブランドコンセプトの決定

ブランドは、「自社の商品を他社の商品と差別化・識別させるもの」として重要です。ブランドが消費者に認知されるよう、ブランドがどのような目的のために存在しているのか、どのような価値を誰に提供するのかを言語化しておきましょう。

2.商品の決定

ブランドコンセプトを決めた後は、Amazonで売る商品を決定します。
商品は、a)ブランドコンセプトに合致しており、b)ドイツのEC市場で需要があり、c)日本での仕入れが現実的なものを選ぶと良いでしょう。

3.商品の仕入れ

商品を選定後には、次に仕入れ作業が続くこととなります。仕入れ価格を抑えることが収益を上げる上で鍵となります。

4.出品

商品の仕入れが完了したら、次にその商品を実際にAmazonに出品します。まず、海外Amazonの出品者用アカウントを取得し、その後、出品者用の専用ページから出品手続きを行いましょう。この専用ページを利用することで、商品の出品や受注状況などを一元的に管理することが可能です。
海外Amazonの出品者登録はこちらから行うことができます。

5.発送

商品を日本国内で配送する場合と同様に、海外での発送方法を選択する必要があります。主な選択肢にはFBA(フルフィルメント by Amazon)とMFN(出品者出荷)があります。海外Amazonにおいて初めての場合、FBAを利用することで、低コストかつ手間を削減して効果的に始めることができます。

表:FBAとMFNのメリットとデメリットまとめ 

発送方法 メリット デメリット
FBA
  • 現地言語での問合せ対応、配送・返品対応をAmazonに委託可能
  • 低コストで販売を開始できる
  • ヨーロッパに在庫を置くため、到着時に輸入付加価値税(VAT)を支払う必要がある
MFN
  • よく売れる商品を直接的に把握可能
  • ヨーロッパに在庫を置かなくても良いため、輸入付加価値税(VAT)を支払う必要がない

(ただし、販売金額や条件によって異なる)

  • 手間がかかる
  • 配送スピードがFBAに比べて遅い

参考:「Amazonグローバルセリングヨーロッパへの配送」

Amazonを活用したドイツでのEC展開における成功ポイント

Amazonを活用したドイツでのEC展開においては、2つ成功ポイントがあります。

1.現地でニーズの高い商品を選ぶ

日本とドイツでは、消費者の商品に対する嗜好が異なります。
ドイツの消費者の嗜好とMade in Japanに対するニーズを適切に把握したうえで、現地でニーズの高い商品を選びましょう。

2.商品の出品価格を適切に設定する

消費者の期待値や競合の出品価格を把握した上で、適切な出品価格を設定しましょう。売れる商品を売れる価格で設定することが重要です。

ドイツ語ができない場合の対応方法

Amazonドイツでは、出品情報の掲載やカスタマーサポートの提供をドイツ語で行う必要がありますが、ドイツ語対応スタッフがいない場合でも通訳・翻訳リソースを補う方法があります。この記事では3パターンの方法を紹介します。

言語と翻訳要件を満たす方法

1.Amazonの翻訳サービスや外部の翻訳会社を使用する

Amazonのグローバル出品連携(BIL)ツールを使用することで、既存の出品情報を元に、ヨーロッパの5つのマーケットプレイス用の出品情報を簡単に準備できます。これにより、未翻訳のままの日本の出品情報を特定するのに役立ちます。
その後、実際の翻訳作業では、Amazonの翻訳サービスや外部の翻訳会社を利用することがおすすめです。

2.無料のオンライン翻訳サービスを使用する

Google翻訳などの無料のオンライン翻訳サービスを利用して、出品情報の翻訳や問い合わせ対応を行うことは可能です。ただし、サービスが進化するにつれて、より高品質な翻訳が求められる可能性があります。

3.ドイツ語に長けた人材やネイティブスピーカーを雇用する

無料のオンライン翻訳サービスの品質に不安がある場合は、ドイツ語のスタッフやネイティブスピーカーを雇用することも検討できます。これにより、カスタマーがより快適に買い物できる環境を整えやすくなります。
参考:ヨーロッパ言語への対応 | Amazon海外販売

Amazonを活用したドイツでのEC展開における留意点

拡大生産者責任(EPR)の準拠が必要

ドイツ国内の消費者へむけて商品を販売する場合、拡大生産者責任(EPR)の法案に従う必要があります。

梱包法および廃電気・電子機器法 (WEEE) に準拠することが義務付けられています。これは、ドイツ国内の個人消費者に商品を配送するすべての販売者に適用されます。

対象となる販売者

販売者がEPR規制の範囲内であること、梱包法に準拠していること。また、電気・電子機器関連の販売する事業者については、廃電気・電子機器法 (WEEE) にも準拠する法的義務 を負っています。

要対応事項

上記については、販売者は事前登録が必要になります。登録後、販売ライセンスと梱包法に関する Lucid ID 、電子廃棄物に関するWEEE番号を受け取ることになります。
もし販売者がeBayアカウントに Lucid ID またはWEEE番号を提出しない場合、ドイツ国内向けの販売が法的に制限されます
引用元:欧州へ販売する際の注意点

梱包法の対応が必要

梱包法の概要

商品をドイツ国内の個人に向けて送る際は、拡大生産者責任(EPR)に順守する必要があり、この法案には、梱包法や廃電気・電子機器法(WEEE)に従うことが義務づけられています。

要対応事項

2023年5月時点の情報では梱包法に基づく法的要件は下記3つになります。

①配送する数量をデュアルシステム(aka system participation)で認可する必要があります。
②ドイツ当局が提供している「Zentrale Stelle Verpackungsregister」(ZSVR)から取得した「Lucid ID」を登録を行い、LUCID番号(包括法EPR番号)を取得の後デュアルシステム側へ提出する必要があります。
③「Zentrale Stelle Verpackungsregister」(ZSVR)で登録したデュアルシステム上の名前とステップ①で認可の降りた配送する数量を入力する必要があります。

対応方法

ステップ①:LUCIDアカウントを無料で登録する。
ステップ②:ドイツのリサイクル業者と契約する(有料)。
ステップ③:LUCIDとリサイクルライセンスを無料で連携させる。
ステップ④:eBayアカウントに無料でLUCID IDを登録する。
参考:欧州へ販売する際の注意点

引用元:【2023年】eBay輸出販売者対応必須!ドイツ梱包法の対応方法を徹底解説 | FREE BIZ LIFE

廃電気・電子機器法 (WEEE)の対応が必要

廃電気・電子機器法 (WEEE)の概要

もしドイツ国内に支店がない場合、製造者としての法的義務を果たすためには、正規代理人を指定する必要があります。この代理人を通じて、「Stiftung Elektro-Altgeräte Register」(廃電気電子機器登録財団)に登録し、必要な手続きを代理で行います。

対象となる販売者WEEE番号の提出は、WEEE法に基づいた製造者もしくは事業者、電子・電気機器法 (EEE) で定められた electrical and electronic equipment を出品している販売者、そしてドイツ国内の個人消費者へ販売している事業者に義務付けられています。

要対応事項

・2023年7月1日以降、ドイツにおいては、WEEE番号を所持している場合、それをeBayアカウントに登録する必要があります。
・既にWEEE番号を取得している場合は、それをeBayアカウントに登録してください。
・まだWEEE番号を取得していない場合は、詳細についてはear – Foundation サイトで確認してください。
・製造業者、生産業者、輸入業者など、ドイツに支社を有する企業は、ear Foundationに登録するか、Interzeroに手続きを委託する必要があります。

14日返品ポリシーの準拠が必要

14日返品ポリシーの概要

欧州連合は通信販売などにおいて14日間であれば返品できる権利を規定しています。バイヤーが契約を解除する権利があり、返品期間についてはバイヤーへ撤回権について通知後、商品がバイヤーに到着した時点から開始されます。

要対応事項

欧州連合(EU)へ発送する対象の商品に関しては、販売者は14日以上の返品ポリシーの設定しなくてはなりません。
引用元:欧州へ販売する際の注意点

まとめ

本記事では、ドイツへのAmazonを活用したEC展開の有望性を解説した後、Amazonを活用したドイツEC展開のステップや成功ポイント、留意点を紹介しました。
Amazonドイツでの出品は、日本のAmazonとの出品とは異なる部分もあり、ヨーロッパ市場の状況や規制を踏まえたアプローチが必要となります。

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