この記事では、Amazonを活用したフランス向けの物販のやり方を紹介します。これからフランスへ向けて事業展開をしたい、販路を拡大したいとお考えの方は参考にしてください。
フランスへのAmazonを活用したEC展開の有望性
フランスのEC市場規模
まず、フランスのEC市場規模を見てみましょう。
フランスEC連盟(FEVAD)の2023年2月7日の発表によると、2022年のフランスのECでの売上高は前年比13.8%増の1,469億ユーロ(約23兆円*1)です。
日本通信販売協会(JADMA)によると、2022年度の日本のECでの売上高は12兆7100億円なので、フランスのEC市場規模は日本の約2倍にあたります。また、フランスの小売業全体の売上高のうち、ECによる売上高は12.5%と推定されています。
表:フランスと日本のEC市場規模、EC化率の比較
EC市場規模(2022) | EC化率(2022) | |
フランス | 約23兆円 | 12.5% |
日本 | 約12.7兆円 | 9.1% |
グローバル調査会社のMordor Intelligence社によると、フランスのEC市場は2026年までに2035.7億米ドル(約30兆円*2)に達すると予想されており、更なる市場の拡大が期待されます。
*1 2023年9月28日の換算レート1 EUR = 157.181 JPYに基づく
*2 2023年9月28日の換算レート1 USD = 149.516 JPYに基づく
参考:「フランスEコマース市場規模・シェア分析-成長動向と予測(2023年~2028年)」
「欧州のEC市場に関する調査 (各国編)」
Amazonのフランスでの市場規模
EC市場調査会社ecommerceDBによると、フランスで最も売上が高いEC企業は断トツでAmazonであり、年間約49.9億ユーロ(約7,800億円*3)の売上を出しています。AmazonのフランスEC市場での圧倒的な地位が伺えます。
*3 2023年9月28日の換算レート1 EUR = 157.181 JPYに基づく
表:フランスの EC 売上高ランキング(2021 年)
(単位:100万ユーロ)
ウェブサイト名 | 金額 | 取扱品目 | |
1 | amazon.fr | 4,988 | 総合 |
2 | cdiscount.com | 1,746 | 総合 |
3 | veepee.fr | 1,688 | ファッション、家庭用品 |
4 | auchan.fr | 1,226 | 総合(スーパーマーケット) |
5 | fr.shein.com | 1,079 | ファッション |
6 | coursesu.com | 1,038 | 総合(スーパーマーケット) |
7 | apple.com | 1,020 | IT製品 |
8 | leroymerlin.fr | 1,000 | DIY、ガーデン用品 |
9 | e.leclerc | 831 | 総合(スーパーマーケット) |
10 | zalando.fr | 715 | ファッション |
出所:statista/ecommerceDB
参考: 「欧州のEC市場に関する調査 (各国編)」
日本製品のフランスでの評価
株式会社電通の調査によると、日本製品は、フランスで「高性能」(27.5%)、「ハイテク」(25.4%)、「上質」(18.3%)、「信頼できる」(17.3%)といったイメージを持たれています。
他方、「特にイメージを持っていない」(21.6%)層も一定存在し、日本製品の更なる浸透やアイデンティティの確立の余地があると考えられます。
これからフランス市場へ進出するメーカーは、製品の性能や品質、上品さを維持しながら、ユニークさを意識すると良いと考えられます。
また、Amazonフランスのサイトを見ると、比較的売れる日本製品は、日本茶(抹茶)、食器(箸、お碗等)、スキンケア用品・化粧品、着物、トイレであることが伺えます。
参考:「外国人が読み解くジャパンブランドの魅力と課題~「日本製品」編」
Amazonを活用したフランスでのEC展開のステップ
つづいて、Amazonを活用したフランスでのEC展開のステップについて説明します。
大きく5ステップに分かれます。
①ブランドコンセプトの決定
ブランドは、「自社の商品を他社の商品と差別化・識別させるもの」として重要です。ブランドが消費者に認知されるよう、ブランドがどのような目的のために存在しているのか、どのような価値を誰に提供するのかを言語化しておきましょう。
②商品の決定
ブランドコンセプトを決めた後は、Amazonで売る商品を決定します。商品は、ブランドコンセプトに合致しており、フランスのEC市場で需要があり、日本での仕入れが現実的なものを選ぶと良いでしょう。
③商品の仕入れ
商品を決めた後は、仕入れを行います。仕入れ価格をどれだけ安く抑えることができるかが収益化のポイントになります。
④出品
商品の仕入れが完了したら、実際にAmazonに出品します。海外Amazonの出品者用アカウントを取得し、出品者用専用ページから出品操作を行いましょう。専用ページでは、商品の出品・受注状況等を一覧で管理できます。
海外Amazonの出品者登録はこちらから行うことができます。
⑤発送
日本国内での配送と同じように、発送方法を決める必要があります。発送方法は、主にFBA(フルフィルメント by Amazon)とMFN(出品者出荷)があります。海外Amazonが初めての場合、FBAを使うと、低コストかつ手間を減らして始められるでしょう。
表:FBAとMFNのメリットとデメリットまとめ
発送方法 | メリット | デメリット |
FBA |
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MFN |
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Amazonを活用したフランスでのEC展開における成功ポイント
①現地でニーズの高い商品を選ぶ
日本とフランスでは、消費者の商品に対する嗜好が異なります。フランスの消費者の嗜好とMade in Japanに対するニーズを適切に把握したうえで、現地でニーズの高い商品を選びましょう。
②商品の出品価格を適切に設定する
消費者の期待値や競合の出品価格を把握した上で、適切な出品価格を設定しましょう。売れる商品を売れる価格で設定することが重要です。
Amazonフランス出品時の翻訳対応方法
Amazonフランスでは、出品情報の掲載やカスタマーサポートの提供をフランス語で行う必要がありますが、フランス語対応スタッフがいない場合でも通訳・翻訳リソースを補う方法があります。この記事では3パターンの方法を紹介します。
言語と翻訳要件を満たす方法
①Amazonの翻訳サービスや外部の翻訳会社を使用する
Amazonのグローバル出品連携(BIL)ツールを使用すると、既存の出品情報を基に、ヨーロッパにおける5つのマーケットプレイス用の出品情報を準備することができます。これは、未翻訳の日本の出品情報を見つけるのに役立ちます。
その後、実際に翻訳する際は、Amazonの翻訳サービスや外部の翻訳会社を活用すると良いでしょう。
②無料のオンライン翻訳サービスを使用する
DeepL等の無料のオンライン翻訳サービスを活用し、出品情報の翻訳や問合せ対応を行うことが可能です。ただし、サービスが発展するにつれて、より質の高い翻訳が必要となる可能性があります。
③フランス語に長けた人材やネイティブスピーカーを雇用する
無料のオンライン翻訳サービスでは品質が心配な場合は、フランス語人材やネイティブスピーカーを雇うのも一案です。こうすることで、カスタマーがより快適に買い物できる環境を整えやすくなります。
参考:「グローバルセリング ヨーロッパの言語への対応」
Amazonを活用したフランスでのEC展開における留意点
①VAT登録が必要
フランスの税法では、フランス国内の消費者に販売を行う出品者、フランスに在庫を保管する出品者、フランスに法的な拠点を持つ出品者に納税者番号(VAT番号)の開示を義務付けており、VAT登録が必要です。
VATに対処するには、早めに専門家のアドバイスを受けることがおすすめです。
②版権などのコンプライアンスが厳しい
欧州では、版権について申し立てがしやすい環境が整っています。そのため、版権が怪しい商品は出品を控えるか、事前に版権問題を解決した方が良いでしょう。
③販売セラーの個人情報の開示義務がある
Amazon欧州では、販売セラーの個人情報の開示義務があります。個人セラーの場合も開示が必要となりますので、ご留意ください。
参考:「CROSS-BORDER EC TAX NAVIGATOR」
「Amazon輸出でフランスに商品を出品・販売する方法」
まとめ
本記事では、フランスへのAmazonを活用したEC展開の有望性を解説した後、Amazonを活用したフランスでのEC展開のステップや成功ポイント、留意点を紹介しました。Amazonフランスでの出品は、日本Amazonとの出品とは異なる部分もあり、ヨーロッパ市場の状況、規制を踏まえたアプローチが必要となります。
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