越境ECにおけるFDA認証|概要からやり方まで解説

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この記事では、FDA認証が必要な商品を海外のEC市場で販売したい方向けに、FDA認証の基礎知識とそのやり方を紹介します。これからFDA認証を取得し、海外へ物販をしたいとお考えの方は参考にしてください。

FDA認証とは

  FDA認証とは、米国の食品医薬品局(FDA)が食品、医薬品、医療機器、化粧品、放射線放出装置等、人の健康に影響を与える製品の安全性や有効性を審査し、基準を満たした製品に与える認証制度です。
これは、米国内で対象となる製品を販売したり、米国に輸出する際に必要となります。FDA認証は、日本・米国における薬機法や食品衛生法の基準を満たしていることを証明する制度です。そのため、FDA認証を取得した製品は、両国の法律に違反していない適正な商品であると認められます。

  FDA認証の取得には、時間と費用がかかるため、海外に向けて販売する際には早めに申請をすることを推奨します。例えば、認証を取得するのに食品で4-6週間、化粧品で3-5週間程度の時間を要します。また、費用は数十万円から数百万円かかる場合があります。

参考:FDA認証の取得方法・対象品目・注意すべき違反の罰則を解説 

FDA認証が必要な品目

 FDA認証が必要な品目は、私たちの生活に密接に関わるものです。食品・飲料をはじめ、化粧品や医薬品、医療機器、放射線放出装置など、さまざまなものが挙げられます。商品のカテゴリーごとに、FDA認証の概要を解説していきます。

食品・飲料

  FDAは、一般食品や健康食品、嗜好品など、ほぼすべての食品・飲料を「食品、飲料」と定義しています。具体的には、以下のようなものが該当します。

  • 青果物(果物、野菜)
  • 魚類、海鮮食品
  • 乳製品、卵
  • 未加工の農産品
  • 飼料、ペットフード
  • 食品、飼料添加物
  • 栄養補助食品
  • 乳児用調整乳
  • 飲料(アルコール飲料、ボトル入り飲料水を含む)
  • 生きた食用動物
  • パン製品、スナック菓子、砂糖菓子、ガム
  • 缶詰食品
  • たばこ製品(巻きたばこ、無煙たばこ含む)

FDAは、これらの食品・飲料の安全性や有効性を保証する責任を負っています。

化粧品

 FDAは、化粧品を「人の体に塗布・塗りつける・スプレーするなどの方法で、体や皮膚を清潔にし、美しく見せ、魅力を高め、または外観を変えるためのもの」と定義しています。

具体的には、以下の商品が化粧品に該当します。

  • スキンケア化粧品(化粧水、乳液、洗顔料など)
  • メイクアップ化粧品(口紅、ファンデーション、コンシーラーなど)
  • ヘアケア化粧品(シャンプー、リンス、トリートメントなど)
  • ボディケア化粧品(ボディクリーム、日焼け止めなど)
  • フレグランス化粧品(香水など)

また、入浴剤や歯磨き粉等も化粧品に分類されます。FDAの化粧品規制は、一般化粧品と「薬用成分配合」化粧品で異なります。

一般化粧品は、安全性に関する一定の基準を満たしていれば、FDAへの事前申請や承認は不要です。ただし、製造施設の登録は必要です。

「薬用成分配合」化粧品は、有効成分の安全性や有効性に関するデータの提出など、より厳しい規制を受けます。また、FDAへの事前申請と承認が必要となります。

米国で化粧品を販売または輸出する際には、化粧品がFDAの規制に該当するかどうかを必ず確認する必要があります。

医薬品

医薬品は、疾病の診断・治療・予防に用いる薬品です。処方薬は、医師の指示に基づいて使用される医薬品であり、市販薬は、医師の指示なしに購入して使用できる医薬品です。ワクチン、血液および血液製剤、遺伝子治療に必要な製品等も医薬品に該当します。

ただしここで留意しておきたいのは化粧品です。化粧品は、外観を整える目的で使用されるもので、疾病の治療や予防の効果を謳うことはできません。

米国では医薬品や化粧品の安全性や品質を保つために、FDAの規制を守る必要があります。違反した場合、警告書の送付、製品の差し押さえ、活動禁止命令、刑事告訴などの罰則を受ける可能性があります。
米国で医薬品や化粧品を販売する際には、事前にFDAの規制を調べて遵守することが重要です。

医療機器

 医療機器とは、病気の診断・治療・予防のために用いる機器の総称です。体温計などの身近なものから手術用メスやCT、MRIなどの大型機器までさまざまな種類があります。

米国では、医療機器のリスクレベルに応じて、3つのクラスに分類されています。

クラスⅠ:リスクが低い医療機器(包帯、歯ブラシ、絆創膏など)
クラスⅡ:リスクが中程度の医療機器(妊娠診断キット、温度計、輸液ポンプなど)
クラスⅢ:リスクが高い医療機器(人工心臓用パルプなど)
米国で医療機器を販売するには、FDAの承認が必要です。承認申請は、FDAの規則に従って書類を提出する必要があります。

申請書類は、医療機器の種類やリスクレベルによって異なります。クラスⅠの医療機器は、一般的に簡易な申請書類で済みますが、クラスⅡやクラスⅢの医療機器は、より詳細な情報や試験データの提出が必要となります。

また、申請工程を社内で完結しようとすると、規制内容の把握不備や提出物の不足など申請完了までに手間や時間がかかってしまうことがあります。そのため、医療機器のFDA認証を取得する際は、認証業務に精通した専門家に依頼することをおすすめします。

放射線機器

放射線機器とは、レーザーポインタ、補聴器、超音波歯ブラシ、マッサージ機器等を指します。  

米国で放射線機器、レーザー製品を販売する際はFDAへの届け出が必須になっています。米国外で作られた製品の場合、FDAがいつでも連絡がとれるように住所・電話番号がわかる米国の代理人を依頼する必要があります。

参考:FDA認証の取得方法・対象品目・注意すべき違反の罰則を解説
      【FDAとは】FDA対象商品と認証手続きの手順について解説

FDA認証の取得方法

米国で販売または輸出する日本企業の製品がFDA規約に該当する場合、事前にFDA認証を取得する必要があります。FDA認証には、製品の種類によって異なる手続きが必要です。

FDA認証の取得方法の図

1.製造施設の登録

米国で販売または輸出する食品や飲料などの製品は、製造施設をFDAに登録する必要があります。また、製品の加工、梱包、保管施設が複数ある場合も、すべての施設を登録する必要があります。

2.米国代理人の指定

FDAでは、米国代理人の指定が義務付けられています。米国代理人とは、不測の事態が発生した際に、申請企業に代わってFDAと連絡を取ることができる人です。米国に拠点があり、登録施設の代理として24時間いつでもFDAと連絡を取ることができることが米国代理人に指定できる人の条件です。

ビジネスを有利に展開するためには、FDA承認に精通した現地の代理人を確保することが重要です。代理人の選任にあたっては、以下の点に注意しましょう。

  • 医薬品に関する豊富な経験と知識
  • FDAへの申請手続きの経験
  • 米国でのマーケティング・販売支援の実績
  • 日本語・英語の対応が可能

登録の更新についてはFDAのサイトで周知しています。また、ウェビナーを実施し、登録手続きの方法や必要となる固有の施設識別名(UFI:Unique Facility Identifier)などについて事業者へ説明を行っています。
ウェビナーの録画もFDAのサイトから視聴可能です。

3.商品ラベルの英語化

FDAは、ラベル表示を「商品またはその容器または包装のすべてのラベルおよびその他の書面、印刷、またはグラフィック事項、またはそのような商品に付随するもの」と定義しています。これには、包装、説明文、製品に同封された印刷物、ウェブサイト、およびその他の販促資料が含まれる場合があります。

そのため、商品のパッケージや説明を日本語だけでなく、英語でも記載する必要があります。

4.食品安全計画の策定

米国では、食品安全強化法(FSMA)により、食品の安全性を確保するために、食品の製造・加工・包装・保管を行う事業者に対して、食品安全計画の策定と実施が義務付けられています。米国から食品や飲料を輸入販売する場合、輸入業者は、食品安全強化法(FSMA)の対象となる食品の製造・加工・包装・保管を行う事業者であるため、食品安全計画の策定と実施を行う必要があります。

5.事前通知

米国への食品・飲料輸出には、FDAの事前通知が必要です。事前通知は、食品の安全性を確保し、迅速な通関を実現するために行われます。

事前通知には、以下の情報が含まれます。

  • 発送者、受取者の氏名、住所
  • 食品製造会社の名称、住所
  • 食品の名称、数量、梱包形態
  • 運送情報

FDA認証を取得する際、上記の5つの手続きを行う必要があります。カテゴリーによって手続きが大幅に異なるため、認証を取得する際の流れや注意事項をしっかりと確認しましょう。

参考:【FDAとは】FDA対象商品と認証手続きの手順について解説
         日本貿易振興機構(ジェトロ)米FDAへの食品関連施設の登録更新が10月1日から開始に

FDA認証の取得における留意点

食品・飲料の場合

米国では、飲料・食品の安全性や品質を保つために、FDAの規則を守る必要があります。FDAの管轄下にある製品の中で、最も申請が多いのが飲料・食品です。
以下について注意する必要があります。

FDA認証の取得における留意点_食品・飲料

  • 原材料の確認…食品・飲料は、原材料の成分表から規制対象かどうかを判断します。FDAが基準とする成分、添加物、着色料以外が含まれていないか確認が必要です。
  • 栄養成分表示…米国で販売される食品には、FDAに承認された方法による栄養分析の結果を表示するためのラベル表記が必須です。具体的には5つの項目「食品表示必要条件」「食品名」「正味内容量表記」「成分リスト」「強調表記」となります。
  • 食品接触材…食品の製造過程や調理過程で使用する器具、食器、包装などの食品に直接接触する物質も規制があるので注意しましょう。

化粧品の場合

化粧品は、用途や効果、さらに配合成分によっていくつかの種類に分類されます。米国では、化粧品は大きく分けて「一般化粧品」と「薬用化粧品」の2つに分類されます。

FDA認証の取得における留意点_化粧品

一般化粧品

一般化粧品は、病気の診断や治療などの目的を有していない化粧品です。米国では、一般化粧品のFDA認証や登録は不要です。ただし、化粧品は使用意図に対して安全性を担保しなければならないため、成分の確認やラベル表示など、英語表記の正しい書類を用意する必要があります。

薬用化粧品

薬用化粧品は、病気の診断や治療などの目的がある化粧品です。米国では、医薬品としてFDAの認証が必要です。

医薬品の場合

医薬品は、医師の処方箋が必要な処方薬と、薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入できる市販薬(OTC医薬品)とに分類されます。

医薬品の種類によって、FDA承認までに必要な手続きや期間が異なるため注意が必要です。処方薬の場合、臨床試験や安全性評価など、より厳格な審査が必要です。一方でOTC医薬品の場合、比較的簡易な手続きで承認を得ることができます。
また、日本での臨床試験結果を使いまわせる場合もあり、手続き準備や審査期間を短くすることができます。

医療機器の場合

医療機器は、患者や医療従事者の安全を守るために、適切な性能や品質を有していることが求められます。そのため、医療機器を製造・販売する際には、認証機関の審査を経て、認証を得る必要があります。

FDA認証の取得における留意点_医療機器

医療機器のクラス分類

医療機器は、患者や医療従事者のリスクの大きさに応じて、クラスⅠ〜クラスⅢの3つのクラスに分類されています。クラスIの製品は最もリスクが低く、クラスIIIの製品は最もリスクが高いとされています。
クラスによって、認証取得のための手続きや期間が異なるため、対象とする製品がどのクラスに該当するかを正しく把握することが重要です。

規格取得

米国に医療機器を輸出する場合、生産者としてISO13485などの品質マネジメント規格を取得することは、製品の安全性や品質の向上につながり、顧客からの信頼獲得や海外市場への進出に有利となるため重要です。ISO13485は、医療機器の品質マネジメントに関する国際規格であり、FDAの承認要件としても認められています。

現地代理人

医療機器の承認を受ける際には、医薬品同様、現地の代理人が必要な場合があります。代理人は、認証申請の代行や、FDAとの連絡窓口などを担います。そのため、FDAに精通した人材を確保することが大切です。

参考:FDA対応(医療品、化粧品、食品など分野別に解説)
    米国FDAの承認 – よくある誤解

FDA認証を取得しなかった場合の罰則

FDAの規則を守ることは、米国で食品や化粧品、医薬品などを販売する上で非常に重要です。違反した場合、重大な罰則を受ける可能性があります。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

警告書の送付

FDAの規則に違反した場合、FDAから製造施設の米国代理人に警告書が送られてくる可能性があります。警告書には、FDAの規則違反の具体的な内容と、改善のために必要な措置が明記されています。

製品の差し押さえ

商品ラベルの表示が事実と異なっていたり、安全性に問題がある食品、化粧品・医薬品がFDAに見つかると、差し押さえられる可能性があります。差し押さえを受けた事業者は、FDAの指示に従って、製品の回収や廃棄をしなければなりません。また、差し押さえの対象となった製品の販売や製造を継続した場合、より厳しい罰則を受ける可能性があります。

FDAによる差し押さえを防ぐためには、以下の点に注意しましょう。

  • 商品ラベルの表示を正確かつ適切に行う
  • 製造施設の衛生管理を徹底する
  • 製品の安全性を確保する

活動禁止命令

長期間にわたってFDAの規則に違反を繰り返し、改善の兆しが見られないと判断された場合、裁判所を通じて活動禁止命令を遂行することができます。

活動禁止とは、FDAが違反を繰り返す事業者に対して、製品の販売や製造を禁止する命令です。活動禁止命令を受けた場合、米国での製品販売を完全に停止しなければならず、大きな損失を被る可能性があります。

刑事告訴

FDAの規則や米国の法律に違反した場合や、消費者に傷害事故を発生させた場合、FDAは事業者を刑事告訴することが可能です。

刑事告訴を受けた事業者は、刑事裁判で有罪判決を受けると、以下の罰則を受ける可能性があります。

  • 罰金(約1100万円〜約5500万円)
  • 懲役(最大10年)

これらの罰則は、米国の消費者の健康と安全を守るために設けられています。FDAの規則を守ることは、企業の社会的責任であると同時に、米国市場でビジネスを成功させるための必須条件です。

まとめ

この記事では「FDA認証の基礎知識」として、米国で食品・飲料・化粧品・医薬品・医療機器を輸出販売する際にFDA認証が必要不可欠です。

FDA認証を取得することで、米国での製品販売を合法的に行うことができ、消費者の安全や信頼を獲得することができます。
米国に食品や化粧品、医薬品などの製品を輸出販売する際には、必ずFDA認証を取得しましょう。

参考:FDA認証の取得方法・対象品目・注意すべき違反の罰則を解説

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