越境ECと補助金ガイド:経済産業省の補助金を活用し海外市場へ

地球儀の模型と電卓の写真 越境EC
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この記事では、これから海外へ向けて事業展開・販路拡大をしたいとお考えの事業主に向けて、越境ECで活用可能な補助金の種類をご紹介します。事業のフェーズに合った補助金の選択方法や申請時の注意点など、押さえるべきポイントについても解説します。

越境ECの基礎知識

海外市場への進出を考える企業にとって、越境ECは海外に拠点を持たずに商品やサービスを海外に展開できる手段です。しかし、新たな市場に足を踏み入れるには多くのリスクとコストが伴います。こうした課題に対し、経済産業省などが提供する補助金を上手に活用することで、海外進出における負担を軽減することができます。

越境ECとは?メリットや市場規模

越境EC(Cross-border E-commerce)は、国境を越えて商品やサービスを売買する電子商取引のことを指します。インターネットの普及により、海外市場をターゲットにすることが身近となり、中小企業にとってもグローバル市場への参入が容易になりました。日本の高品質な製品やサービスは世界でもニーズが高いため、海外市場には大きな潜在顧客が存在していると言えるでしょう。競争力のある製品やサービスを提供することで成果を上げることができると考えられます。また、国内市場だけに依存せずに海外市場での販売が増加することで、リスクの分散が可能となります。

グローバルマーケットへの展望と潜在的なビジネスチャンス

グローバルマーケットは拡大し続けており、特に新興国市場の成長が顕著です。人口の増加やインターネット利用の普及により、新たな市場が出来ています。越境ECにおいては、異なる国や地域の文化やニーズに対応できる戦略が求められますが、その分野で競争優位性を築くことで、大きく売上を伸ばせる可能性があります。海外市場では、自社製品やサービスを新たな顧客層にアピールするチャンスが広がっています。

越境EC事業の立ち上げに補助金を利用するメリット

海外市場への進出は中小企業オーナーにとって新たなビジネス展望を開く重要な戦略です。しかし、新たな市場に参入するためには多くのコストがかかる場合が多く、リスクも潜んでいます。こうした課題に対し、経済産業省や他の支援機関が提供する補助金を利用することで、特にコストの面でリスクを抑えて挑戦することが可能になります。

①補助金の多様な用途

経済産業省や他の支援機関は、越境EC事業に必要な様々な用途に使える補助金を提供しています。例えば、海外市場調査を含めた国際的なマーケティング活動の費用補助、海外展示会やビジネスミッションへの参加費用の補助、海外進出時の人材育成プログラムへの助成などがあります。これらにかかる費用の負担を減らすことで、事業の立ち上げをサポートし、短期間で成果を上げるための力強い財源となります

②リスク軽減と事業継続のサポート

新たな市場に参入する際には、言語や文化、法規制の違い、新たな競合他社との競争など、多くのリスクが存在します。補助金を活用することで、リスク対応のための費用削減ができます。また、事業の立ち上げ段階からの補助金の利用は、事業の持続性をサポートすることにも繋がります海外市場への進出が成功した後も、成長を持続させるためには戦略的に資金を投下し続ける必要がある場合もあります。補助金は、成長段階においても事業をバックアップし、持続的な発展をサポートします。

③知識とネットワークの拡充

補助金を活用することで、海外進出における知識やネットワークの拡充が可能となります。補助金の活用をもとにした国際的な会議展示や産業団体の活動への参加によって他の中小企業や関連企業と繋がりを持つ機会を得ることもできます。これらの機会を活かすことで、海外進出におけるノウハウや成功事例を学んだり、事業展開に有益なコネクションを築くことができます。

越境EC事業立ち上げの際に利用できる主な補助金

越境EC事業を立ち上げる際には、綿密な計画と多くのリソースが必要ですが、経済産業省や地方自治体が提供する補助金を上手に活用することで、成功への道が開ける可能性が高まります。この項目では、越境EC事業の立ち上げに利用できる主な補助金をご紹介します。

IT導入補助金

越境EC事業においては、効率的なオペレーションやセキュリティ強化のために、適切なITシステムの導入が必要です。IT導入補助金は、中小企業のITシステムの強化や新たなテクノロジーの導入を支援する制度です。海外顧客との円滑なコミュニケーションを実現するためのツールや、ECサイトの構築や運用をサポートするシステムの導入のために活用する資金として申請が可能です。

ものづくり補助金

海外市場で競争力のある商品を提供するためには、商品の品質やデザインの最適化が不可欠です。ものづくり補助金は、中小企業オーナーが海外市場向けの優れた製品を開発し、その製品の輸出を促進することを目的として、商品の品質向上や付加価値の高い製品の開発を支援する制度です。補助金を利用して海外市場でニーズの高い商品を開発することで、現地でも競争優位性の高い商品を提供することができます。

海外需要拡大事業費補助金

海外市場における事業展開には市場調査やプロモーション活動が欠かせません。海外需要拡大事業費補助金は、海外市場での販路拡大やプロモーション活動の費用を補助する制度です。海外市場への参入に際しては、その市場のニーズや競合状況を把握し、効果的なマーケティング戦略を立てることが重要です。補助金を活用して市場調査やプロモーション活動に投資することで、より多くの顧客に製品やサービスを届けることができます。

小規模事業者持続化補助金

この補助金は、中小企業の経営強化や海外市場への進出を含む事業計画の支援を目的としています。越境EC事業の立ち上げには膨大なリソースが必要ですが、持続化補助金を利用することで特にコスト面での負担を軽減し、事業の持続的な成長を促進することができます。

補助金選びのポイント

取捨選択を行う様子

補助金を利用することで、海外進出に必要な資金を確保し、事業の立ち上げや成長に繋げることができます。しかし、補助内容や条件など様々な補助金が存在し、その選び方には注意が必要です。この項目では、補助金選びのポイントについて解説します。

募集期間

補助金は一定の募集期間内に申請しなければなりません。募集期間は補助金ごとに異なり、通常数週間から数か月程度の期間が設けられています。早めに募集情報を収集し、応募期間を逃さないように注意しましょう。また、募集期間内でも補助金が予算に達すると締め切られる場合があるため、早めの申請が重要です。

補助内容

申請できる補助金の内容は事業内容や用途によって異なります。例えば、海外市場調査やマーケティング活動、海外進出に必要な設備投資や人材育成に関する補助金などがあります。自社の越境EC事業の内容で申請可能な補助金をよく確認しましょう。事業計画に適した補助金を申請することで、補助金の採択をより有利に進めることができます。

対象業種・対象者

補助金は対象業種や対象者が限定される場合があります。特定の産業や技術分野に特化した補助金、新規参入企業や特定地域に重点を置いた補助金などが存在します。補助金の対象に自社が該当しているかを確認し、適切な補助金を見極めましょう。また、中には非営利団体や個人など企業以外の対象者もあるため、応募資格を十分に理解することが重要です。

採択率

補助金の採択率は応募者に対してどれだけの割合で補助金が採択されるかを示す指標です。採択率が低い補助金はプロジェクトの内容や効果を具体的に応募者が満たすべき要件や条件が多く、審査プロセスが複雑です。採択される確率は低くなりますが、採択された場合の支援内容も充実しています。
一方、採択率が高い補助金は、地域振興や中小企業支援、新技術導入など、特定の社会的ニーズに対応するプロジェクトに焦点をあてているものが多いです。そのため応募者の条件に合致しやすく、採択される可能性が高まります。

IT導入補助金はどうやって利用する?

業務の効率向上や顧客満足度の向上、新たなビジネスチャンスの創出などを目指す事業者にとって、新たなITシステムやツール、セキュリティ対策などに対して出されるIT導入補助金は採択率も高くおすすめです。

申請~採択決定~補助金交付までの流れ

申請~採択決定~補助金交付までの流れを表した図

  • 申請書の準備

    補助金を申請するためには、指定された申請書を提出する必要があります。申請書には、事業計画や補助金の活用方法、予算などを詳細に記入する必要があります。正確かつ詳細な情報を提供することで、採択率を高めることができます。

  • 書類の提出と審査

    申請書や必要な書類を揃えたら、指定された受付窓口に提出します。提出後、審査が行われます。審査では、事業計画の適切性や補助金の条件への適合性が評価されます。審査には数週間から数か月かかる場合があるため、余裕を持って申請を行いましょう。

  • 採択決定と交付

    審査が終了すると、採択決定の通知が届きます。採択された場合は、補助金の交付が行われます。交付までの期間は申請した枠の種類によって異なります。

申請に必要なもの

IT導入補助金を申請する際に必要な主な書類には以下が挙げられます。

  • 事業計画書
    補助金を活用してどのようなITシステムの導入を行うか、具体的な事業計画を申告します。
  • 予算書
    ITシステム導入にかかる予算を明確に示します。
  • 法人登記簿謄本
    自社が法人であることを証明する書類です。
  • 納税証明書
    納税義務を適切に果たしていることを示す書類です。

IT導入補助金の申請は煩雑な手続きが伴う場合がありますが、しっかりと準備を行い、補助金を有効に活用することで、越境EC事業などを通した海外市場への新たな展望を開く第一歩を踏み出せるでしょう。

2023度のIT導入補助金申込スケジュール

採択カレンダー

先にもご説明した通り、補助金は募集期間中に申請する必要があります。スムーズに事業計画を進められるよう、適切な申請時期を検討しましょう。

IT導入支援事業者の登録申請

  • 登録申請
    2023年8月1日(火曜)受付開始~終了時期は後日案内予定
  • 募集期間
    2023年8月14日(月曜)受付開始~終了時期は後日案内予定

交付申請期間

  • 募集期間
    受付開始:2023年8月1日(火)
    *デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)およびデジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)は、2023年8月下旬より申請開始を予定

通常枠

5次締切

締切日 事業実施期間
2023年8月28日 (月) 17:00 交付決定~2024年3月29日 (金) 17:00

6次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年10月2日 (月) 17:00 2023年11月6日 (月) (予定) 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00

7次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年10月30日 (月) 17:00 2023年12月4日 (月) (予定) 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00

セキュリティ対策推進枠

5次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年8月28日 (月) 17:00 2023年10月12日 (木) (予定) 交付決定~2024年3月29日 (金) 17:00

6次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年10月2日 (月) 17:00 2023年11月6日 (月) (予定) 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00

7次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年10月30日 (月) 17:00 2023年12月4日 (月) (予定) 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00

デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)

7次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年8月28日 (月) 17:00 2023年10月12日 (木) (予定) 交付決定~2024年3月29日 (金) 17:00

8次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年9月11日 (月) 17:00 2023年10月24日 (火) (予定) 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00

9次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年10月2日 (月) 17:00 2023年11月6日 (月) (予定) 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00

10次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年10月16日 (月) 17:00 2023年11月20日 (月) (予定) 2024年5月31日 (金) 17:00

11次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年10月30日 (月) 17:00 2023年12月4日 (月) (予定) 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00

12次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年11月13日 (月) 17:00 2023年12月18日 (月) (予定) 交付決定~2024年6月28日 (金) 17:00

デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)

3次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年10月2日 (月) 17:00 2023年11月6日 (月) (予定) 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00

4次締切

締切日 交付決定日 事業実施期間
2023年10月30日 (月) 17:00 2023年12月4日 (月) (予定) 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00

デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)

3次締切

交付決定日 交付決定日 事業実施期間
2023年10月2日 (月) 17:00 2023年11月16日 (木) (予定) 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00

IT導入補助金の注意点

IT導入補助金を活用する際の注意点もあります。新規ドメイン取得のタイミング、補助金の対象外になる場合がある点や制度変更に対する注意点について解説します。

新規ドメイン取得のタイミング

越境EC事業を展開するためには、海外市場向けのウェブサイトを用意する必要があります。その際、新たなドメイン(ウェブアドレス)を取得する場合、IT導入補助金の申請前にドメインを取得してしまわないように注意が必要です。なぜなら、補助金の対象となる事業が既に開始している場合、補助金の対象外となる可能性があるためです。ドメインの取得は補助金申請の後に行うようにしましょう。

補助金の対象外になる場合がある

IT導入補助金は、特定の条件や要件を満たす事業に対して支給される制度です。しかし、申請者が定められた要件を満たさない場合、補助金の対象外となってしまう可能性があります。例えば、補助金の申請期限を過ぎてしまった場合、補助金の利用ができなくなることがあります。補助金の詳細な要件をよく理解し、事前に自社の事業が対象となるかを確認することが大切です。

制度変更に注意

経済産業省や地方自治体は、事業の需要や社会の変化に応じて補助金の内容や条件を見直すため、補助金制度は時折変更されることがあります。そのため、以前は対象外だった事業が新たに対象となることもあれば、逆に以前は対象だった事業が対象外となることもあります。補助金を活用する際には、最新の情報を把握することが重要です。経済産業省の公式ウェブサイトや関連する情報サイトを定期的にチェックし、制度変更に注意しましょう。

まとめ

この記事では、越境EC事業構築のために活用できる補助金について詳しく解説しました。
申請条件や提出書類など確認事項や必要な手続きが煩雑になりがちな補助金制度ですが、上手く活用してコストを抑えた海外進出を実現させましょう。

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