マレーシアのEC市場は、デジタル化の推進や中間所得層の拡大、さらには新型コロナウイルスの影響でオンラインショッピングが一般化したことで近年顕著な成長を遂げています。この記事では、マレーシアのEC市場の特徴、主要ECサイトとShopeeの立ち位置、そしてマレーシアの市場で特に人気のある日本製品について解説します。
Shopeeを活用したマレーシア向けの物販のやり方についても解説しますので、これからマレーシアで事業展開や販路拡大を検討している方は参考にしてください。
マレーシアのEC市場の概況
マレーシアのEC市場の特徴は、多様性です。多民族国家のマレーシアでは、それぞれの文化や宗教に適した商品の需要もある点がEC市場の伸びを後押ししていると言えるでしょう。また、近年のEC普及率の高まりは、スマートフォンの普及率の高さにも関係しており、モバイル経由での購買が主流です。
マレーシアのEC市場の利用率
マレーシアの東南アジア近隣諸国と比べた、オンラインショッピングの利用率をみてみましょう。
2020年のEC化率は、ASEAN主要6カ国の中、マレーシアは3番目の3.0%でした。シンガポールに比べるとEC化率は低いですが、今後さらなる成長が期待されます。
理由は、マレーシア政府がオンライン経済の発展を「国家戦略の優先課題」と位置づけているからです。
マレーシアの主なECサイトとShopeeの立ち位置
マレーシアで主に利用されているECサイトは、Shopee、Lazada、PGモールの3つです。
モール型ECサイトにおけるマレーシアでのマーケットシェアに目を向けてみましょう。EC販売サイトにおけるデスクトップ・モバイル両方を合わせた訪問者数において、2018年はLazadaが東南アジア全体のトップを維持していました。一方で、訪問者数第2位のShopeeは、Lazadaのリードを2018年度時点で66%まで追い上げたものの、それ以上の伸びを見せられない状態が2019年になっても続きました。
しかし、2019年第2四半期に、ShopeeがMAU(月間アクティブユーザー数)で初めてLazadaを抜いて首位に立ちました。
ShopeeがMAUで首位を奪取できたのは、エンターテイメントショーやポップカルチャー、動画配信サイトでのプロモーションなど、アプリ内でのユーザーとのコミュニケーションを増やす、様々な施策を実施したことが要因だったと考えられます。
その後も、Shopeeは2022年第2四半期の時点でアクセス人数が5,390万人に達し、マレーシアの人々の生活に欠かせない存在となっています。
参考:マレーシアのEC事情は?東南アジアで人気の通販【Shopee】について紹介!
東南アジアで急成長するショッピー「Shopee」越境ECにも追い風 | マレーシア ビジネス情報サイト『CONNECTION』
マレーシアのEC市場で売れる日本製品
現在でも多くの日本企業が進出を果たしているマレーシアですが、進出にあたっては様々なメリットがあります。しかしながら、同時に注意点も存在します。それらのポイントをしっかりと押さえ、マレーシアへの販路拡大を考えていきましょう。
メリット | デメリット |
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メリット
1.Shopeeは店舗開設時の初期費用が無料
出店における初期費用が無料です。そのため、小規模事業者や個人事業主でも気軽にビジネスを開始できます。
2.日本語でのサポートがある
Shopee Japanのスタッフが日本語で出店者へのサポートを行っています。
困ったときは、いつでも質問可能なプラットフォームも用意されており、越境ECが初めてな場合でも、安心して取引をすることが可能です。
3.日本からの発送が可能
受注から決済までの配送サポートサービスも紹介してくれます。そのため、今まで越境ECを行ったことがない企業でも、安心して出店することができます。
デメリット
1.商品単価が低い
マレーシアは、日本に比べるとまだ物価が安いです。また、全体的に商品の価格が低い市場のため、高価な商品を売りづらい状況です。
日本の販売者にとっては、国際的な送料も考慮すると商品価格が上昇してしまい、競争相手の商品との価格比較で不利になる可能性があります。
2.早期の売上確保が
東南アジアはまだ発展途上の段階で、日本のEC市場と比べてすぐに売上を伸ばすのは難しい状況です。さらに、アカウント新規開設後には販売実績がまだないため、販売実績を積み上げたり、レビューを集めたりするための効率的なマーケティング活動などの取り組みが求められます。
3.外国語でのカスタマー対応が必要
お客様とのコミュニケーションは基本的に英語やマレー語で行われます。Shopeeでは、商品情報の部分はインドネシアや台湾向けに翻訳してくれますが、日々のやり取りは基本的にユーザー自身が外国語で対応することが求められます。
さらに、東南アジアの消費者は購入前にチャットで問い合わせを行うことが多く、迅速かつ親切な対応が不可欠です。
参考:マレーシアのEC事情は?東南アジアで人気の通販【Shopee】について紹介!
東南アジア・台湾で最大級のECマーケットプレイスShopeeとは?
Shopeeを活用したマレーシアでのEC展開のステップ
1.店舗アカウント作成
まずは店舗アカウントの作成を行います。
手順はコチラ
2.店舗アカウントの初期設定
店舗アカウントの作成ができたらアカウント、店舗ページの初期設定を完了させます。
※出品前までに必ず物流設定(Shipping Setting)を完了させてないと購入者が注文することができず機会損失に繋がってしまうので注意しましょう。
店舗アカウントの初期設定についてはコチラ
店舗ページの初期設定はコチラ
3.出品
上記初期設定完了後、出品ができるようになります。
5商品以上の出品をして出店準備は完了です。
※Shopeeの最低出品数は5商品からになります。
また、5商品以上の出品をすると販売者教育プログラムに入ることができ、売り上げ向上をサポートするためのサービスを受けることが可能です。
商品のアップロード方法はコチラ
参考:【新規セラー向け】出店ガイド | Shopee JP Seller Education Hub
Shopee SLSの活用方法
1.SLSについて
「SLS」”Shopee Logistics Service” の略で、Shopeeを活用する際に利用できる独自の配送システムとなります。このサービスを利用することで、効率的かつ安全に商品を配送することが可能です。
2.SLSの活用ステップ
Step 1: SLSへの利用同意
下記をマーケットごとに確認しましょう。
- 所要日数
- 貨物のサイズ
- 重量
- SLSの送料
- 取り扱い不可品目
- 申告条件
- 関税等
- 留意点
Step 2: SLS配送チャネルのスイッチONを確認
セラーセンターログイン後にSLSの配送チャネルの、スイッチを有効状態にすることで配送チャネルの登録は完了となります。
Step 3: セラーセンターにて、オーダー受注を確認
購入者からの支払い完了後、SLSの利用が可能となります。
Step 4: 発送期限内にラストマイルラベル(SLS配送時の送り状)を印刷、発送準備
SLSの発送では、Shopeeが定めた発送期限内に送る必要があります。国際輸送のため配送日数が長くなりますが、発送期限を守ることが重要です。期限超過はペナルティの対象です。商品発送時には、ラストマイルラベル(SLS配送時の送り状)を目立つ部分に貼り、Shopeeの梱包ガイドラインに従ってください。サンプルやギフトも課税対象です。国内配送では、異なるマーケット向けの貨物を一緒に梱包・発送することが可能です。
Step 5: 配送会社へ集荷の手配
日本国内の集荷や発送方法は、佐川急便による集荷もしくは販売者自身による配送手配によって手順が異なるため、発送準備完了後に集荷を手配し、Shopeeの国内倉庫まで発送する必要があります。
Step 6: 国内倉庫にてラベルをスキャン、計量、荷姿の検品
販売者がShopeeの国内倉庫に送ったオーダーは、到着時にバーコードスキャンで確認され、セラーセンターに追跡情報が更新されます。しかし、国内配送の追跡はセラーセンターではできないので、配送遅延や紛失に備えて、配送会社が発行する送り状番号を記録しておく必要があります。倉庫で荷物の重量を計測し、その重量に基づいて販売者に課金されます。また、日本から輸出できないオーダーは販売者の費用負担で返品されます。
Step 7: 輸出通関後、国際航空便で各マーケットへ、購入者へ配達
税関からの輸出許可を受けたオーダーは航空機に搭載され、各国のマーケットへ配送されます。輸入通関後、現地の配送会社に引き渡されて購入者の住所に配送されます。オーダーが購入者への配送中に紛失または破損した場合、Shopeeが一部を補償します。購入者が商品を受け取り、受け取りボタンを押した後、約3日で売上金がセラーセンターのMy Incomeに反映され、SLSの送料は売上金から差し引かれます。
SLSの活用には7つのステップがありそれぞれの理解を深めておく必要があります。
各ステップの詳細はコチラ
参考:【シンガポール・フィリピン・マレーシア・台湾】SLSのご案内
Shopeeを活用したマレーシアでのEC展開における留意点
1.販売規制商品が存在する
マレーシアでは販売規制商品が存在します。
ジャンル別に一部をご紹介します。
オンライン販売禁止商品 | 輸入禁制品 | 現地ライセンスが必要 |
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上記製品には十分注意を払い出店を行いましょう。
参考:リスティング禁止/物流規制品目・カテゴリ別注意点について | Shopee JP Seller Education Hub
2.ノンハラル対応が必要
「ハラル」とは、アラビア語で「許されている」という意味で、合わせて「禁じられた」という意味を持つ「ノンハラル」という言葉が存在しています。
shopeeにおけるノンハラル対応とは、ノンハラル商品であることを明示し、購入者が商品を選ぶ際に適切な情報を提供する必要があります。また、商品の写真も正確かつ明確に表示することが重要です。
マレーシアECに参入を考えているのであれば、文化や宗教の違いをしっかりと理解する必要があります。例えば、ノンハラルの代表格として「豚肉」と「酒」があげられ加工品には原材料名の細かな記載をするといったことに注意をしなくてはなりません。
参考:マレーシアのEC事情は?東南アジアで人気の通販【Shopee】について紹介!
Shopeeを活用したマレーシアでのEC展開における成功ポイント
Shopeeの客層に合った商品を売る
Shopeeの客層で日本からの出品商品を購入する主な層は30代前後「親日層」が中心となります。
そのため、マレーシアの「メインの購入層」に日本製品がダイレクトに刺さりやすい状況となっているのです。
マレーシア国内では、日本製品が手に入りにくいこともあるため、年齢層に合わせた一定の需要のある商品を出品していくことが重要です。
インフルエンサーを活用する
Shopeeが開催した「マレーシアのインフルエンサーとEコマースの未来」において、インフルエンサーがマレーシア人のオンライン購入意向にどれほど影響を与えているかについての調査結果が公表されました。
「Shopee」の最新のマーケットプレイス調査によれば、調査対象者の75%が問題解決や商品知識の拡大のために、インフルエンサーによるチュートリアル動画を活用しています。そして、10人のうち5人のマレーシア人が、フォロワー数50万人以下の「マイクロナノインフルエンサー」に共感していることが明らかになりました。
消費者がこれらのインフルエンサーに親近感を抱く理由は、自分が関心を持っている特定の分野のインフルエンサーが口コミで商品をおすすめするためと考えられます。
参考:マレーシアのEC事情は?東南アジアで人気の通販【Shopee】について紹介!
参考:Shopeeマレーシア、インフルエンサーがオンライン購買者に与える影響について発表 | | Salam Groovy Japan
まとめ
この記事では、マレーシアにおけるEC市場の概況やShopeeの立ち位置、Shopeeを活用したマレーシアでのEC展開方法等を紹介しました。Shopeeやマレーシアの消費者の特徴、ノンハラル対応、販売禁止品などに注意しながら、自社の事業展開を進めていきましょう。