この記事では、家具ECの市場規模や市場動向、成功ポイントを解説します。これから家具業界でEC事業を立ち上げたいとお考えの方は参考にしてください。
家具業界のEC市場規模
家具業界のEC市場規模とEC化率の推移
家具EC事業の立ち上げを検討する際、まずは市場規模とその変遷を理解することが重要です。2021年時点で、家具EC市場の規模は2兆3541億円で、EC化率は29.59%でした。さらに、2019年から2022年にかけて、家具EC市場は順調に成長しています。この数字は、EC事業が今後も成長のポテンシャルを秘めていることを示唆しています。
消費者のECを通じた家具購入意向
EC事業を成功させるためには、消費者の購買意向を把握することが不可欠です。特にコロナ禍以降、ECサイトを介した家具購入が増加しています。
【調査概要】株式会社スパコロが全国20~69歳家具購入経験者1,980名を対象に実施したアンケート調査「OMO実態調査家具店編」によれば、コロナ後、ECサイト(家具店等専門店のECを除く)の利用率は4.0ポイント、また家具・インテリアブランドのECサイト利用率は7.3ポイント上昇しています。これは、EC市場が今後も成長し、競争が激化する兆候を示しています。
さらに、消費者の情報収集媒体に注目すると、約17%の人々が通販サイトやアプリから家具・インテリアに関する情報を入手しており、多くがウェブ経由で情報を収集しています。家具EC事業を展開する際に、オンラインを活用して存在感を高めることが重要です。
参考:コロナ禍で家具の購買はどう変わったのか 『OMO実態調査 家具店編』
家具業界のEC市場動向
家具業界大手5社の概況
ニトリ | 無印良品 | イケア・ジャパン | 大塚家具 | LOWYA | |
売上高 | 911億円 (2022年3月期) |
222億3,700万円 (2020年2月期) |
954億1,800万円 (2023年1月期) |
3億6,600万円 (2019年第四半期累計EC売上高) |
163億円 (2023年3月期) |
特徴 | ニトリアプリに新機能「コーディネートページ」を挿入。 高評価商品を「みんなのイイね。」コーナーや店舗の特集ページで紹介 |
全店でスタッフのオススメや地域の情報などを店舗ごとに発信 毎週金曜日に新商品やお得な情報を配信する「週刊MUJI」も展開 |
イケアストアでショールームを見ているかのように買い物ができる「IKEAアプリ」を開始 | リアル店舗での買い物を疑似体験でき、商品の購入が可能なバーチャルショールームを開設 | Instagramのユーザー投稿を自社ECに活用し、ブランド価値を高める |
ニトリ
ニトリは通販事業でも力を入れており、国内通販売上高は前期比128.3%増の911億円に達しました。さらに、2023年3月期にはライブコマース視聴者数が累計260万人を突破し、2024年3月期には配信の強化を図るために人員を追加する予定です。
また、ニトリは、ニトリアプリに新機能「コーディネートページ」を導入し、ライフスタイルに合わせたコーディネートを提案しています。この機能により、顧客はコーディネートを確認した後、商品を購入できます。また、高評価商品を「みんなのイイね。」コーナーや店舗の特集ページで紹介するなど、買上品目数と客単価の向上にも取り組んでいます。
参考:株式会社ニトリホールディングス 2023年3月期 決算説明会
無印良品
「無印良品」を運営する良品計画のEC売上高は2020年2月期に222億3,700万円に達し、前期比で11.2%増加しました。また、MUJI passportアプリのダウンロード数は6,978万件に上り、11の国・地域で展開されています。
MUJI passportアプリは、日本を含む多くの国で人気を集めています。EC化率は6.8%に達し、無印良品はオンラインプレゼンスを着実に拡大しています。
参考:良品計画のEC売上は222億3700万円の11.2%増、EC化率は6.8% 2019年度実績
参考:数字で見る良品計画
イケア・ジャパン
イケア・ジャパンはオンラインストア「ikea.jp」をオープンし、売上を順調に増加させています。特に新型コロナウイルスの影響により、2023年1月に発表された売上は954億1800万円に増加しました。
イケアはオムニチャネル戦略にも注力し、2020年4月、イケアストアでショールームを見ているかのように買い物ができる「IKEAアプリ」を開始しました。独立した多くのチャネルよりも、顧客に一貫したイケア体験を提供することを重視しています。
参考:イケア・ジャパン株式会社 第21期決算公告
参考:イケアが目指す新たなオムニチャネル戦略
大塚家具
大塚家具の2019年1〜12月期(第4四半期累計)におけるEC売上高は、前年同期比7.8%減の3億6600万円でした。
大塚家具はEC売上高の改善に取り組んでおり、バーチャルショールームを開設し、ECサイトの利便性を向上させました。バーチャルショールームでは、リアル店舗での買い物を疑似体験でき、商品の購入が可能です。
さらに、サイトの改修により視認性や商品検索性を向上させ、EC事業の強化を図っています。
参考:大塚家具の2019年1~12月期のEC売上は約3億円で7.8%減
LOWYA
LOWYAは2023年3月期の売上実績が163億円となり、2023年3月末時点で、同社のスマホアプリのダウンロード数は累計89万件、インスタグラムのフォロワー数は84万人、TikTokは10万人、YouTubeのチャンネル登録者数は2万人となり、スマホアプリのダウンロード数やSNSフォロワー数が急増しています。
特に、「DOKODEMO」という越境ECプラットフォーム事業は6億円超と売上高を増加させ、会員数が100万人に達しました。 SNSを活用した集客が着実に進展しています。
参考:ベガコーポレーション、LOWYA事業の売上163億円 上期が低迷、巻き返すも微減
参考:【2023年版】家具・インテリアECの業界動向と大手5社を解説
家具業界のEC進出における成功ポイント
①ブランドの世界観を確立する
自社ブランドの独自性や世界観を明確にしましょう。家具購入は感情に関わる重要な決定であり、顧客はブランドの価値観に共感することを望むことが多いです。美しいデザイン、高品質、環境に優しい製品など、ブランドの特徴を強調しましょう。
②商品のラインナップを工夫する
競合他社と差別化するために、商品のラインナップに工夫を凝らしましょう。コストパフォーマンスが優れた製品や、他社にはない独自性のあるアイテムを提供することが、成功の秘訣です。顧客にとって選択肢が豊富で魅力的な商品を用意しましょう。
③ECと実店舗の融合を促進する
EC事業を成功させるためには、ECと実店舗をシームレスに結びつける戦略が重要です。顧客がECから店舗へ、または逆に店舗からECへと移動できるサイクルを構築しましょう。この連携により、顧客の利便性を高め、購買体験を向上させることが可能です。
④デジタルを活用して顧客エンゲージメントを高める
デジタル技術を活用して顧客とのエンゲージメントを強化しましょう。顧客データの収集と分析により顧客の好みや行動パターンを把握し、個別にターゲットしたマーケティング戦略を展開しましょう。これにより顧客ロイヤルティを高め、売上を増加させることが可能です。
まとめ
この記事では、家具ECの市場規模や市場動向、成功ポイントを解説しました。家具業界の市場拡大とともに、EC市場規模も拡大しているため、これから家具のEC販売を検討している方にはチャンスと捉える事ができます。
また、EC販売を利用して事業を拡大させている企業を参考にし、自社の売上拡大に生かしましょう。