お酒のEC販売|必要な免許、ステップ、成功ポイントを解説!

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この記事では、お酒をECで販売する際に必要な免許、ステップ、成功ポイントを解説します。これからお酒をEC経由で売りたいとお考えの方は参考にしてください。

お酒のEC化率

アルコール飲料のオンライン販売は、これまで他の商品と比べて低いEC化率を持っていました。それは以下によるものが要因と考えられています。

食品産業のEC化率の低さ

酒類を含む「食品産業」のEC化率が3.31%と低いため、全体のEC市場に比べて進展が遅れています。

商習慣の影響

お酒業界は長い歴史と商習慣が根付いており、従来の流通ルートに依存する傾向が強いため、EC化への適応が遅れています。

規制とライセンスの問題

お酒の販売には法的な規制やライセンスが必要であり、これらの手続きやコンプライアンスに対する認識がEC進出を難しくしています。

消費者の信頼度

お酒は偽造品や未成年者への販売などのリスクがあるため、消費者の信頼を築くためにはセキュリティと年齢確認の仕組みが必要であり、これらの実装がEC化を遅らせています。

しかし、最近のトレンドや消費者の行動パターンの変化により、お酒業界におけるEC化が加速していますこの先ではお酒をECで販売するために必要な免許、ステップ、そして成功ポイントについて解説します。

参考:「お酒」の“EC化率”はなぜ低い? 「お酒のネット販売」を伸ばし、業界革命へ  ~自社ECサイト10月22日リニューアルオープン!~

お酒のEC販売に必要な免許と取得方法

お酒のEC販売を始めるためには、一定の免許が必要です。ここでは、必要な免許とその取得方法について詳しく解説します。

必要な免許

お酒のEC販売には、通信販売酒類小売業免許が必要です。この免許は、お酒をオンラインで販売するための許可証であり、法的にお酒を販売するために不可欠です。

参考:通信販売酒類小売業免許申請の手引

通信販売(2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、商品の内容、販売価格その他の条件をインターネット、カタログの送付等(注1)により提示し、郵便、電話その他の通信手段(注2)により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う販売をいいます。以下同じ。)によって酒類を小売することができる販売業免許が、「通信販売酒類小売業免許」です。

(注1)「カタログの送付等」とは、カタログの郵送等による配付又は備置きのほか、チラシ等の新聞折込み又は郵送等による配付若しくは備置き、雑誌又は新聞への広告掲載及びテレビ放送の利用等をいいます。 
(注2)「通信手段」とは、郵便等、電話機、ファクシミリ装置その他の通信機器若しくは情報処理の用に供する機器を利用する方法、電報又は預金若しくは貯金の口座に対する払込みをいいます。

免許の取得要件

人的要件

免許の申請者が、過去に酒類の製造や販売に関する免許の取り消しを受けたことがないかや、国税や地方税の滞納処分を受けたことがないかなど、販売者に問題がないかなどが求められます。

場所的要件

申請書に記載する販売所(実際の業務を行うネットショップの事務所など)が、酒類の製造所や飲食店などと同一の場所ではないことが必要です。

経営基礎要件

免許の申請者(法人であれば役員)が過去1年間に銀行取引の停止処分を受けていないか、申請現在に国税又は地方税を滞納していないかなど、事業経営のために必要な資金や経済的信用、製品または販売設備、経営の物的・人的・資金的要素に欠損がないことが必須です。

需要調整要件

通信販売酒類小売業免許で販売が可能な酒類の定義を満たしていることが必要です。

取り扱えるお酒の種類

国内

国産の酒類に関しては、年間の販売量が酒類品目ごとで3,000キロリットル未満の「蔵元(酒類製造業者)」が製造・販売している種類に限ります。

輸入

輸入酒類の場合、とくに規制は設けられていませんが、酒類を輸入する際に、食品衛生法等に基づく届出(食品等輸入届出書)が必要になります。

参考:ネットショップでのお酒販売に必要な「通信販売酒類小売業免許」とは?取得方法や必要書類も解説!

免許取得の流れ

通信販売酒類小売業免許を取得するための一般的な流れは以下の通りです。

通信販売酒類小売業免許を取得するための一般的な流れ

①販売するお酒の決定

まず、販売するお酒の種類を決定しましょう。国内産、輸入、または両方のお酒を取り扱うかを考えます。

②必要書類の準備

免許申請に必要な書類を整理しましょう。これには、事業計画書、居所地証明書、経営者の身分証明書などが含まれます。

③申請

免許申請を行います。通常、地元の酒類販売規制機関に提出します。詳細な手続きは地域によって異なりますので、規制機関のガイドラインに従ってください。

④審査・結果の通知

申請が受理されると、免許申請の審査が行われます。審査に合格した場合、免許の取得が許可され、通知が届きます。

⑤免許登録

最後に、免許登録手続きを行います。これにより、お酒のEC販売を正式に開始することができます。免許証の有効期限や更新手続きにも注意が必要です。

参考:ECサイトでの酒類販売について

海外でお酒をEC販売する際に必要な免許

輸出入卸売業免許

輸出入卸売業免許は、国際的な取引を行う事業者に対して発行される免許であり、自己が輸出または輸入する酒類を卸売することができる免許です。このライセンスを取得することで、国際的な貿易を行う際に法的な手続きを遵守できるようになります。
輸出だけする場合は輸出卸売業免許、輸入だけする場合は輸入卸売業免許の申請となります。

つまり、海外向けにのみECサイトで販売する場合は
『輸出酒類卸売業免許』
海外と日本国内にECサイトで販売する場合
『輸出酒類卸売業免許』
『通信販売酒類小売業免許』
の両方が必要、ということになります。

参考:ECサイトで海外へお酒を販売するには??

お酒のEC販売のステップ

お酒のEC販売のステップ

①ブランドコンセプトを決める

まず、お酒のEC販売を始めるにあたって、ブランドコンセプトを明確にしましょう。あなたのビジョンやお酒に対する独自のアプローチを定義することは、成功の基盤となります。お酒の種類や特徴、ブランドのストーリーを考え、差別化ポイントを見つけましょう。

②ターゲット層を決める

次に、どのような顧客層に向けてお酒を販売するかを決定しましょう。より具体的なターゲットを設定することで、効果的なマーケティング戦略を展開できます。顧客の好みや購買力、地理的な特性を考慮しましょう。

③商品を決める

販売する商品を選定しましょう。国内産のお酒、輸入品、特定の種類やブランドに特化するか、多様な品揃えを提供するかを考えます。需要の高い商品やニッチな市場を見極め、ラインナップを構築しましょう。

④通信販売酒類小売業免許を取得する

お酒をECで販売するためには、通信販売酒類小売業免許が必要です。この免許を取得する手続きや要件について、前述のガイドを参考に進めましょう。免許取得はEC販売を行う上での法的な基盤です。

⑤商品を作る/仕入れる

お酒を製造する場合、製品開発やブランディングに時間がかかるかもしれません。また、既存のお酒を仕入れることも選択肢です。品質と供給の安定性を確保しましょう。

⑥出店する

オンラインストアを構築し、お酒のEC販売を開始しましょう。ウェブサイトのデザインや使いやすさ、セキュリティに注意し、信頼性のあるオンラインプラットフォームを選択します。商品ページの充実や購入プロセスのスムーズさも大切です。

⑦分析・改善する

販売が始まったら、定期的にデータを分析しましょう。顧客の購買傾向やウェブサイトのトラフィックを追跡し、マーケティング戦略や商品ラインナップを改善していきます。顧客のフィードバックにも耳を傾け、サービスの向上を図りましょう。

お酒のEC販売における留意点

お酒のEC販売を考えている方にとって、「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」は特に重要ですこの基準を遵守することは、法的なコンプライアンスを守り、信頼性を高める鍵となります。

未成年者の飲酒防止に関する表示基準

未成年者の飲酒防止に対する厳格な姿勢を示し、法律を順守することは、ビジネスの信頼性を高め、法的なトラブルを避ける鍵となります。未成年者の健康と安全を守るために、表示基準を遵守しましょう。
未成年者の飲酒を防止するための主な表示基準には以下のような要点が含まれます。

  • 年齢確認の義務
    未成年者にお酒を販売することは法律で禁止されています。したがって、購入者が法定飲酒年齢以上であることを確認する義務があります。ECサイトでの購入時に年齢確認を実施し、未成年者への販売を防ぎましょう。
  • 表示と警告
    ウェブサイト上でお酒を販売する場合、年齢制限を明示的に表示しましょう。また、未成年者に対する警告メッセージも掲載します。これにより、未成年者へのアクセスを制限し、規制遵守を強調します。
  • 年齢確認ツールの使用
    年齢確認ツールを導入し、購入者の年齢を確認します。これには、年齢を証明する公的な書類の提出や、クレジットカード情報の入力が含まれます。
  • 配送と受け取りの制限
    配送時にも年齢確認を行い、未成年者へのお酒の受け取りを防ぎます。年齢確認ができない場合は、商品の引き渡しを拒否しましょう。
  • 法的ペナルティの認識
    未成年者にお酒を提供すると、法的な罰則が課せられることがあります。違反を防ぐためにも、表示基準を厳守しましょう。

参考:ネットショップでのお酒販売に必要な「通信販売酒類小売業免許」とは?取得方法や必要書類も解説!

お酒のEC販売の成功ポイント

お酒の販売による収益化

お酒のEC販売は競争が激しい分野ですが、成功を目指す方はいくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、お酒のEC販売における成功ポイントを解説します。

①新規顧客を獲得するための工夫をする

取り扱い商品の種類を増やす

多様な種類のお酒を提供することで、幅広い顧客層を獲得しましょう。ワイン、ビール、ウイスキー、焼酎、日本酒など、さまざまなカテゴリーから選択肢を提供することで、顧客のニーズに応えることができます。

SNSなどで情報発信を行う

SNS(ソーシャルメディア)プラットフォームを活用して、お酒に関する情報発信を積極的に行いましょう。美しい写真や知識豊富なコンテンツを通じて、フォロワーを増やし、ブランド認知度を高めることができます。また、セールやプロモーションをSNS上で実施することで、新規顧客の獲得につなげましょう。

②リピーターを増やすための工夫をする

ネットショップサービスは定期購入が使用できるものを使う

定期購入オプションを提供することで、リピート顧客を増やすチャンスをつかみましょう。お酒は定期的に購入する商品として適しているため、顧客が毎月自動的に商品を受け取る仕組みを提供することで、売上と顧客ロイヤルティを向上させることができます。

リピート施策を行う

リピート顧客を大切にし、特別なプロモーションやクーポンを提供してロイヤリティを育みましょう。また、購入履歴を活用して、顧客に合ったお酒を提案することもリピーターの増加に貢献します。

③関連商品と合わせて販売する

お酒と相性の良い関連商品を提供することで、平均注文額を増やしましょう。例えば、ワインに合うチーズやおつまみ、カクテル用のツールなどをセットで販売することで、顧客のショッピング体験を向上させます。

④オペレーション体制を構築する

EC販売を効率的に運営するために、適切なオペレーション体制を構築しましょう。在庫管理、注文処理、配送、カスタマーサポートなどのプロセスを効率化し、顧客に迅速かつ信頼性のあるサービスを提供します。また、セキュリティ対策も怠らずに、お客様のデータを守りましょう。

参考:ネットショップでお酒を販売する為の開業手順や成功させる為のコツ、注意点を解説

越境ECを活用したお酒の輸出

世界のEC市場におけるお酒の販売状況

世界のEC市場におけるお酒の販売状況

1990年から2017年までの世界の年間アルコール消費量は約70%増加しており、209億9,900万リットルから356億7,600万リットルに増加しました。
飲酒者は45%から47%まで増加し、生涯非飲酒者は46%から43%まで減少しました。この傾向は今後も続き、2030年には飲酒者は50%、生涯非飲酒者は40%まで進むと予測されています。
地域別のアルコール消費量では、2010年から2017年にかけて、インド、ベトナム、ミャンマーを中心とした東南アジアの中・低所得国で34%の増加となっています。

参考:【国際】世界のアルコール消費量、東南アジアや西太平洋の中低所得国で急増。研究者論文

海外でお酒をEC販売する際に必要な免許

輸出入卸売業免許

輸出入卸売業免許は、国内でお酒を輸出または輸入し、卸売業務を行うための許可証です。この免許を取得することで、お酒を海外へ正規に出荷し、海外市場で販売する権限が与えられます。免許の取得には法的な手続きが必要で、慎重な輸出入業務からの保護や自主規制を遵守するために重要です。

お酒の輸出におすすめの越境ECサイト

①日系企業による越境ECプラットフォームを利用する

日本のお酒を海外市場で広く販売する方法の一つは、日系企業が運営する越境ECプラットフォームを利用することです。以下に、2つの主要なプラットフォームを紹介します。

  • 酒虎
    日本酒の卸売と物流を提供するコンタクトトランスとコスモスが共同運営する酒ECサイトです。高価格帯の商品を中心に注目しており、世界中の49カ国に向けて販売しています。サイトは蔵元と契約を結んで直販するモデルを採用しています。
  • Japanpage:Sake
    Japanpage:Sakeは日本酒の販売に特化したオンラインプラットフォームで、地域ごとの特色ある銘柄や種類を提供しています。国際的な市場にも焦点を当てており、日本酒を海外に発送するサービスも提供しているため、世界中の顧客が日本酒を購入し、楽しむことができます。

これらの日系プラットフォームは、出店手続きが日本語でわかり、1つのサイトで複数の国に商品を出品できるというメリットがあります。

②輸出相手国の現地ECプラットフォームを利用する

ECプラットフォームを利用する方法も良いですが、集客を考えると、輸出相手国の現地ECプラットフォームを活用することが重要です。中国へのお酒の輸出例を挙げます。

  • 天猫(TMALL)
    アリババが運営する中国最大のECサイトで、広範な商品カテゴリーを提供しています。多くの出店者がおり、海外食品も販売されていますが、食品のメインは限定されています。
  • 京東商城(JD.com)
    中国で2番目に大きいECサイトで、多くの日本製品が注目されています。日本製品専用サイト「日本館」もあり、日本のお酒を集約する事業者も多数存在します。

これらの現地ECプラットフォームは現地法人を設立する必要がなく、日本から出店することが可能です。また、中国で日常的に利用されているため短期的に利用する層にアプローチできるメリットがあります。

参考:越境ECを使ってお酒・日本酒をどんどん輸出!中国・韓国編

まとめ

この記事では、お酒をECで販売する際に必要な免許、ステップ、成功ポイントを解説しました。販売方法や目的に合わせて適切な免許を取得し、ECの利点を生かして自身の事業成長につなげましょう。

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