この記事では、ECサイトにおけるカゴ落ちの対策をしたい方向けに、カゴ落ちの概要や原因、対策、おすすめの対策ツールを紹介します。これからカゴ落ち対策を検討したいとお考えの方は参考にしてください。
カゴ落ちとは?
カゴ落ちとは、消費者がカートに商品を入れたにもかかわらず、購入せずにサイトから離脱する現象を指します。カート内の商品は購入意欲があった商品だと考えられるため、カゴ落ちを防止することは売上向上に寄与します。
一般的なECのカゴ落ち率
ECサイトを訪問した消費者がカゴ落ちしている割合のことを「カゴ落ち率」と呼びます。「カゴ落ち率」が高いほど、消費者の離脱が多く、対策の余地が大きいと考えられます。
アメリカの調査会社Baymard Instituteによると、2023年のカゴ落ち率の平均値は70.19%です。自社のECサイトのカゴ落ち率を計算し、この平均値と比較することで、自社の立ち位置を把握しましょう。
カゴ落ち率の計算方法
カゴ落ち率は、以下の計算式で算出できます。
カゴ落ち率 (%)=(カートに商品を入れたが離脱した人数÷カートに商品を入れた人数) ×100
うち、
カートに商品を入れたが離脱した人数=カートに商品を入れた人数 – 商品を購入した人数
で算出することができます。
参考:「カゴ落ち対策とは?離脱要因の解決する施策11選とツールを解説」
「カゴ落ちとは?発生する10の原因や3つの対策を分かりやすく解説」
「49 Cart Abandonment Rate Statistics 2023」
カゴ落ちの原因
カゴ落ちの対策を打つためには、原因の解明が必要です。以下では、アメリカの調査会社Baymard Institute(2023)の統計データをベースに、カゴ落ちの原因を解説します。なお、Baymard Institute(2023)では、49件の調査研究結果を基に、カゴ落ち率の平均値を算出しています。
1.追加料金が高い(47%)
送料や手数料が想定していたよりも高く、購入をやめてしまうケースです。カゴ落ちにおいて最も多い理由は追加料金の高さで、47%の消費者がこの理由でカゴ落ちします。
2.決済時にアカウント作成が必要(25%)
決済をする際に、アカウントの作成を求められ、面倒になって購入をやめてしまうケースです。カゴ落ちにおいて二番目に多い理由が「決済時にアカウント作成が必要」で、25%の消費者がこの理由でカゴ落ちします。
3.配送に時間がかかり過ぎる(24%)
商品の到着予定日が予想より遅く、購入をやめてしまうケースです。カゴ落ちにおいて三番目に多い理由が「配送に時間がかかり過ぎる」で、24%の消費者がこの理由でカゴ落ちします。
4.クレジットカード情報の登録に抵抗がある(19%)
クレジットカード情報を登録することに、不安や抵抗を感じる消費者もいます。19%の消費者が「クレジットカード情報の登録に抵抗がある」という理由でカゴ落ちします。
5.決済のプロセスが複雑で長い(18%)
決済のプロセスが長くて複雑だと、消費者が面倒に感じてしまいます。18%の消費者が「決済のプロセスが複雑で長い」という理由でカゴ落ちします。
6.合計金額が事前に確認できない(18%)
いざ決済をしようとしたら、予想以上に合計金額が高く、購入意欲がなくなったケースです。18%の消費者が「合計金額が事前に確認できない」という理由でカゴ落ちします。
7.返品ポリシーに満足できない(16%)
商品の返品について明示されていなかったり、返品ポリシーが消費者にとって納得がいくものでないと、カゴ落ちにつながる可能性があります。16%の消費者が「返品ポリシーに満足できない」という理由でカゴ落ちします。
8.サイトエラーが起きた(14%)
決済時にページがフリーズしたりエラーが起きたりして、適切に決済できず、カゴ落ちにつながるケースも存在します。14%の消費者が「サイトエラーが起きた」という理由でカゴ落ちします。
9.決済手段が不十分(11%)
普段使っている決済手段が使えないと、消費者が購入をやめる可能性があります。Baymard Institute(2023)によると、11%の消費者が「決済手段が不十分」という理由でカゴ落ちします。
10.クレジットカードが拒否された(6%)
決済時にクレジットカードが拒否され、決済できなかったケースです。6%の消費者が「クレジットカードが拒否された」という理由でカゴ落ちします。
上記に基づくと、消費者は手軽かつ合理的に商品の購入を進めたく、金額、時間、決済手段等の面での必要労力が想定より高いと、カゴ落ちする傾向があるといえます。
そのため、ECサイト運営者としては、消費者の購入にかかる金額や時間・手間を減らす、必要な金額を前もって知らせる、決済手段を多様化するといった消費者に寄り添った工夫が必要となります。
参考:「49 Cart Abandonment Rate Statistics 2023」
「カゴ落ち対策とは?離脱要因の解決する施策11選とツールを解説」
カゴ落ちの対策
カゴ落ちを防ぐための対策を9つ紹介します。自社のサイトでカゴ落ちの原因となっているものは何か把握した上で、必要な対策は何か検討してみるのがおすすめです。
1.送料等の追加費用を低減する
送料等の追加費用が原因でカゴ落ちしている場合、その費用を低減することが有効です。送料を全て無料にすると自社の負担が大きくなりますが、特定の商品に絞って戦略的に送料をゼロにする、送料込みの金額を初めから提示する等の工夫をすることで、離脱低減が可能と考えられます。
2.会員登録なしで利用可能にする
会員登録なしでも決済できるようにすると、消費者の手間が省け、カゴ落ち防止につながります。「アカウント作成が必要なら、あとで買おう」とついつい購入を後回しにしてしまうユーザーに対して、カゴ落ちを未然に防ぐことができます。
3.配送方法の選択肢を増やす
配送方法の選択肢を増やすことで、カゴ落ちを低減できます。お急ぎ便を導入することは、到着予定日が遅いことからカゴ落ちしている消費者への有効な対策となります。
また、受け取り方法を複数設定すると、消費者の購入意欲が高まります。宅配ボックス、ロッカー、コンビニ等、ライフスタイルや価値観によって、消費者が好む受け取り方法は異なります。複数の選択肢を用意しておけば、異なる消費者のニーズを満たしやすくなります。
4.セキュリティ対策について明示する
消費者はサイトのセキュリティに対して不安を持ち、情報登録をためらうことがあります。そのため、セキュリティ対策について明示することが重要です。
5.決済のプロセスを簡素化する
決済のプロセスにおける手間を減らすことで、カゴ落ち防止につながります。例えば、入力内容をサイトが記憶することで、消費者の再入力の手間を減らしたり、入力フォーム最適化ツールを活用して、入力プロセスの簡素化を図ることが可能です。
6.決済前に合計金額を確認できるようにする
決済前に合計金額がわからないと、カゴ落ちの可能性が増えます。
消費者が予算を決めて買い物をしている場合、決済画面まで進んだ段階で予算超過しているとわかると、購入自体をやめる可能性があります。しかし、事前に合計金額を知らせれば、消費者は商品等を調整しながら購入を行うことが可能になります。
ほかにも、送料を明示したり、税込・税抜価格かを明示することで、消費者は金額の把握がしやすくなります。
7.返品ポリシーを明示する
ECサイトの場合、自身に合わない商品の返品可否について気になる消費者も多くいます。そのため、返品や交換のポリシーを目立つ位置に記載すると、消費者の不安を低減できます。
その際、返品可能な期間、開封後の返品可否、送料の負担先など、具体的な項目を記載することで、消費者の安心感につながります。
8.ECサイトの表示スピードやUIを改善する
サイトエラー等による消費者の離脱を防ぐため、ECサイトのシステムを改善することも重要です。サイトデザインやシステムの強化を行うと、画面の表示スピードやUIが改善し、消費者が使いやすいサイトになります。
9.複数の決済手段に対応する
各消費者が普段使用している決済手段は一定のため、複数の決済手段に対応することで、より多くの消費者に対応できます。利用率の高いクレジットカードに加え、コンビニ決済、キャリア決済、後払い決済などの決済手段を用意しておくと利便性が高まります。
参考:「カゴ落ち対策とは?離脱要因の解決する施策11選とツールを解説」
「カゴ落ちとは?ECサイトのカゴ落ちの原因や対策・改善方法を解説」
カゴ落ち対策ツール
カゴ落ち対策には、ツールの活用も有効です。以下に、ツールの概要やおすすめのツールを紹介します。
カゴ落ち対策ツールの種類
カゴ落ち対策ツールには、カゴ落ちメール、決済フォーム改善ツール、Web接客ツール、MAツールがあります。
カゴ落ちメール
カゴ落ちしてしまった消費者に対してメール配信することで、購入のリマインドを行うツールです。
ツール選択の際のポイントは以下です。
- カゴ落ちメールを送れる頻度・期間
- メールの作成難易度
- メール内容のカスタマイズ可否
- 費用・料金体系
決済フォーム改善ツール
商品購入画面に移動するまでのプロセスを改善するツールです。
ツール選択の際のポイントは以下です。
- 入力補助、エラー表示の有無
- 分析ツールの有無
- 決済サービスとの連携可否及び決済手段の豊富さ
- 費用・料金体系
Web接客ツール
ユーザーの疑問を解決したり、ユーザーに応じたおすすめの商品を紹介したりするツールです。
ツール選択の際のポイントは以下です。
- チャット機能の有無
- 消費者へのお知らせ機能の有無
- 分析機能の有無
- 費用・料金体系
MAツール
新規顧客獲得における一連のマーケティング施策を、管理・自動化・効率化するツールの総称です。上記で紹介したツールを総合的に取り入れたいのならMAツールがおすすめです。
参考:「カゴ落ち対策とは?離脱要因の解決する施策11選とツールを解説」
「カゴ落ち対策ツール12選!カゴ落ちメールからフォーム改善まで」
おすすめのカゴ落ち対策ツール8選
Cuenote【カゴ落ちメール】
カゴ落ちしたユーザーに自動でリマインドメールを送るツールです。カゴ落ちしたユーザーに対して、自動的にリマインドメールを送る「カートリマインド機能」を備えています。メールの内容はカスタマイズ可能です。
また、カゴ落ちの結果回復した金額・率を画面で確認できるため、カゴ落ち状況の分析が容易にできます。
SaleCycle【カゴ落ちメール】
カゴ落ちメールを配信できるツールです。
サイト離脱時にリアルタイムでカゴ落ちメールを送れたり、メールを読まないユーザーにはSMSでアプローチしたりすることが可能です。閲覧した商品に基づきメールで商品をレコメンドする機能もあるため、購入促進につながります。
また、サイト離脱直後にアンケートメールを送信する機能があり、ユーザーからインサイトの収集が可能となっています。
KAIZEN UX【決済フォーム改善】
購入カートや申し込みフォームの改善が可能なツールです。決済時、顧客がどこで離脱したか、なぜ離脱したかを分析し、決済フォームを最適化します。
顧客の購入履歴や閲覧履歴に基づいて、コンテンツや商品をランキング形式で紹介する機能がついており、サイト内の回遊率の向上につなげることが可能です。
BOTCHAN PAYMENT【決済フォーム改善】
チャットボットとの会話による決済を可能にするツールです。
一問一答の会話形式で決済が進むため、ユーザーの入力ストレスを軽減させ、離脱防止を図ることが可能です。また、クレジットカード、後払い、AmazonPay、PayPayなど様々な決済方法に対応しています。
Gyro-n EFO【決済フォーム改善】
手軽に利用できるEFO入力フォーム最適化ツールです。
入力時の対応必要事項のリアルタイムな案内、入力ミスのお知らせ、住所入力補助等の22の入力支援機能を有します。また、ログ解析機能があり、企業は離脱率の高い項目等を確認し、離脱原因の分析を行うことが可能です。
細かい設定は専門スタッフが支援してくれるため、企業は既存のフォームに設定タグを貼るだけで簡単に導入できます。
SELF for EC【WEB接客】
AIによるWeb接客システムです。AIが消費者へニーズの確認を行い、商品の説明・提案を行います。行動履歴や購買傾向から、パーソナライズされた商品提案を行うため、売上向上に寄与します。
A/Bテスト導入を行ってから本導入するプランもあり、リスクを減らしながらの導入が可能です。
カートリカバリー【MAツール】
カゴ落ち対策全般を行えるMAツールです。カゴ落ちしたユーザーにリマインドを行う「カゴ落ちメール」に加え、新規ユーザーをターゲットとした「カゴ落ちリマーケティング広告」機能を備えています。
カゴ落ち後、最短15分後からリアルタイムでメール配信ができます。また、ユーザーの行動履歴に基づいた広告配信を行ったり、機会損失、メール・広告経由での売上情報等を把握でき、カゴ落ち原因の分析も容易にできます。
KARTE【MAツール】
カゴ落ち対策に特化したMAツールです。メールやプッシュ通知など複数の手段を活用し、顧客ジャーニーに沿った配信を簡単に行えます。例えば、ポップアップを開封した場合はメール、開封しなかった場合はプッシュ通知など、カゴ落ちステップに沿った対策が可能です。
参考:KARTEウェブサイト
まとめ
この記事では、ECサイトにおけるカゴ落ちの概要、カゴ落ちが発生する原因、原因を踏まえた対策、そしておすすめの対策ツールを紹介しました。こうした情報を活用して、カゴ落ち対策並びに売上向上を目指していきましょう。